コポ...
薄く開いた唇から小さな泡の粒がいくつも零れる。
「...」
彼が私の名を呼ぶたびにこの身体は深く沈んでゆく。
「」
ああ、また息をする機会を失ってしまった。
「溺れそう。」
「ん?何か言ったか?」
「んーん、何も。」
暖炉もストーブも無い肌寒い事務所で、深くソファーに沈みこみ私は小さく声を漏らした。
コポリ...
息苦しくて酸素を求めるように口を開くと、生温い水が入り込んできて肺を満たしてゆく。
「ダンテ...」
「どうした?」
ゆっくりと目を開くと、ソファーの端に腰を掛け私を覗き込むブルーの瞳と目が合う。
「名前を呼んで。」
「?」
「もっと...」
「。」
「ダンテ。」
「。」
ふっと口元を緩めて、その腰に縋るように腕を回す。
「甘えてくるなんて珍しいんじゃないのか?」
何も答えず頭を膝の上に乗せる。
「ねぇ、ダンテ...」
「なんだ?。」
―――ああ、また
「溺れそう...」
そう呟いた私にダンテは何も言わず静かに口付けた。
「っは、ぁ...」
離れた瞬間大きく息を吸い込むと、今度こそ肺は酸素で満たされた。
救い出された溺れる魚
ああ、これでまたあなたに溺れることができる。
「ダンテ...すき」
呟いた自分の言葉に、コポリ...
END
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