『 ―――― ・・・♪』
ふと聴こえた旋律にバージルは小さな文字を追っていた視線を上げた。
微かに聴こえる歌声は異国の言葉で紡がれておりその意味は理解できなかったが、心地良いそのメロディに読みかけの分厚い本を置いた。
天井まで届く大きな扉を開け広い廊下へと出ると、彼女に割り当てた部屋の扉が僅かに開いていた。
初めて彼女に出会ったのは館の庭だった。
魅了される・・・とはこういうことを言うのだろうか。
バージルは無言で彼女を抱き上げ館へと招き入れた。
カタ・・・ギィ・・・・
そっと触れると扉が開く。
「すまない、驚かせたか?」
「いいえ。いらっしゃるのはわかってましたから。」
くすくすとおかしそうに笑う彼女はそっと立ち上がるとバージルの方へと歩み寄ると、細い指先でバージルの頬を撫で、「お邪魔してしまいましたか?」と呟く。
「いや、心地よい響きだった。」
頬を滑る指先を掬い上げるとその指先に口付けを落としてやる。
「続きを、。」
バージルは近くにあった椅子に腰をかけ静かに目を閉じ聴き入る。
「歌詞の意味を・・・」
「え?」
「その歌の歌詞の意味を教えてくれ。」
バージルの問いかけに歌うことを止め、は窓に背を向けバージルの胸元へ頭を押し付けた。
「御呪いです。」
「呪い?」
「はい。『アナタとの時間が永遠に続きますように。離れ離れになることがあろうとも私の心はアナタのものです。』そういう意味がこの歌には込められているんです。」
「離れ離れになどなるものか。」
バージルの言葉には驚きの表情で顔を上げる。
「俺は一生お前を手放したりなどしない。」
見開いたその瞳に唇を寄せると軽く閉じられる。
「俺の心も・・・、お前のものだ。」
未だ息の整わぬの耳に唇を寄せそう囁き、きつく抱きしめる。
はバージルの背に回した腕に力を込め、肯定の意を示した。
END
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