ゴツンゴツンと地面とブーツがぶつかり合う音がスラムの一角で鳴り響く。

男は苛立っていた。

久しぶりだった合言葉つきの依頼に、「たまにはちゃんと稼いでちょうだい、家主さん。」と愛しい彼女に言われ出掛けたのは2週間前だった。
いざ行ってみればハズレの仕事。
さっさと終わらせて帰るつもりが、何が船の故障だ。今思い出しても腹が立つ。
やっとの思いで港に着いたが、船長を締め上げたところで気が晴れる訳でもなかった。

連絡も無しにこんなに留守にしたことを彼女は怒っているだろうか。
愛想をつかして出ていってるかもしれない。

そんな最悪な考えが頭を過ぎり、ダンテはその歩みを速めた。







Devil may cry
いつもは煌々としているピンクのネオンが消えていた。
慌てて入り口を蹴り破るように開けると周囲を見回す。

(・・・いない?)

心なしか綺麗に整頓された室内を見回しても目的の人物の姿を捉えることはできなかった。
乱暴に階段を駆け上がり彼女に割り当てた部屋の扉を開けると、布団は畳まれどこかよそよそしさを感じた。

―――嫌な予感は的中する・・・・か。

ダンテはあらゆる最悪な結末を振り払う為に血と埃で汚れたコートを脱ぎ捨てシャワールームへ向かった。
冷たい水を頭から被り思考の渦から這い上がる。


ッカタン・・・


突如聞こえた微かな音に滴る水を無視し飛び出した。


「きゃっ!!」


ダンテが今一番望んでいた声が聞こえる。
真ん丸に目を見開き驚く彼女の顔は出て行った時となんら変わることはなかった。
ツカツカと足早に近付き、買い物袋を抱えた彼女の細い手首を掴み乱暴に引き寄せると小さな悲鳴が聞こえる。
構わず抱き締めるとふわりと彼女特有の甘い香りが鼻腔をくすぐった。

「ダンテ・・・身体冷たい、よ?」

いつもと様子が違うことに戸惑っているような気配がするが構わない。

・・・」

小さく名前を呼ぶと彼女の小さな肩がぴくりと反応した。

に会いたかった。いなくなったかと思った・・・」

そう言って抱き締める腕に力を籠めると、腕の中のは小さく身動ぎをした。

「苦しいよ、ダンテ。」

そう言って小さく微笑むに愛しさが膨れ上がる。
ようやく触れることのできたこの甘い柔らかさに、我慢ができない・・・できるわけがない。

大きく口を開けの桜色の唇に噛み付くようなキスをしようとダンテは首を擡げたが、それは空振りに終わった。

ふいっと顔を逸らした
「ねぇ・・・ダンテ。私ね、これでも怒ってるんだよ?」
そう微笑みながら言う彼女は傍から見れば、甘い言葉を囁いているようにも見える。が、彼女を良く知るダンテは背筋に冷たいものが走るのを感じた。
ここは素直に謝るべきだと、「すまなかった。」と口にすると溜息を吐かれた。

「捨てられたのかと思った・・・」

溜息の後の彼女の言葉に目を見張る。

―――俺がを捨てるだって?そんなもの悪魔と仲良く手を繋いで踊るくらいありえない!

「たまには稼いできてだなんて意地の悪いこと言っちゃったから・・・愛想尽かされちゃったのかと思った。」

ぎゅっとダンテのウエストにしがみつくと「帰ってきてくれて良かった・・・」とぽつりと呟く。
同じ気持ちで待っていてくれたことに、ダンテは申し訳く、だがそれ以上に嬉しさでいっぱいになってしまった。

素早く彼女を抱き上げると、すぐ傍のソファに静かに降ろし上から覆いかぶさると, まだ何か言いたそうなの唇に噛み付く。

「んぅ・・・」

喉から甘く漏れる声にぞくりと肌が粟立つのを感じると、うっすらと開いた唇にするりと舌を差し込んでやる。
逃げるように動く舌を捕らえる、その甘さを味わうかのように丁寧に舐り吸い上げてやるとびくりとの身体が震えた。
潤む目で見つめられいよいよ我慢も限界だと、その柔らかな膨らみに手を這わせようとしたが手首を軽く掴まれ制止される。

「連絡も無しに私をほったらかした罰・・・」

小さいがはっきりと聞き取れるボリュームで囁かれると「まさかオアズケか」と少し覚悟した。
嫌がる彼女を無理矢理力任せに抱くのは簡単だが、それでは満たされない。
心が満足しないのだ。

軽く身を離すと続きの言葉を待つ。

するりとの白い腕がダンテの首に回されたかと思うと、ちゅっと耳元に小さなリップノイズが響いた。





「私を愛して・・・」




愛しい人からの甘い囁き




「okey darling」






ようやく微笑んだに、ダンテは優しい口付けを贈ると軽々と彼女を抱き上げ、今は少し長く感じる階段を足早に駆け上がって行った。









END



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あ・・・よく考えたらダンテ真っ裸じゃね?





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